めまいの原因は、内耳・三半規管によるものから脳疾患、糖尿病、高血圧、不整脈によるものなど多岐に渡ります。
当院では、CCD赤外線カメラを用いた眼振検査、重心動揺検査・ラバー負荷検査、純音聴力検査、問診や神経学的所見の診察などを組み合わせて正確な診断を心がけています。
めまいで来院される方の半分以上はこの病気が原因と言われます。30代~50代の女性に多く、原因ははっきりとしたものはありません。内耳にある三半規管に耳石が入り込んでしまい、頭を動かすことで耳石が刺激となって、コーヒーカップに乗った後のようなぐるぐるとしためまいを感じてしまうものです。一回のめまいの持続時間は数秒~数分程度ですが、数日~数週間の間何回も症状が繰り返し起こります。
元々内耳の前庭と呼ばれる部位に存在する、バランスを感じる器官です。目をつぶっても頭が傾いているのがわかるのは、この耳石が内耳のリンパ液の傾きや流れを感知しているからです。
発症早期のつらい時期は、抗めまい薬や吐き気止めなどの内服治療で症状を和らげます。BPPVでめまいが起きている間は眼振という目の揺れがあってつらいので、暗いところにいたり目をつぶっていたほうが良いです。症状が落ち着いてきたら、再発を防ぐために徐々にリハビリを使った根本治療に取り組んでいきましょう。内服は対症療法に過ぎません。Epley法やLempert法、Brandt-Daroff法などの耳石を動かすリハビリがありますが、どの半規管が原因なのか、左右どちらが悪いのかでリハビリの方向が変わりますので、一度ご相談ください。Youtube®などの動画サイトでリハビリの動きを確認するのも良いと思います。
三半規管のバランス情報を脳に伝える神経を前庭神経といいます。ここに炎症が起きて、強烈なめまいが数日~何週も持続してしまうのが前庭神経炎です。一説にはヘルペスウイルス属の関与も指摘されています。バランス神経のみの不具合ですので、難聴はともなわず呂律障害や感覚異常などの脳の病気をうたがう症状も認めませんが、とにかくめまいが強烈でほとんどが何度も嘔吐を繰り返してしまい、入院となるケースが多いです。入院中は安静+点滴治療をまず行い、数日後から徐々に手すり付きの安全な廊下などを歩行して自宅に帰る準備を進めていきます。
内耳という耳の奥の部分が浮腫(むくみ)を起こし、低音部優位の難聴とめまい、耳鳴りを繰り返す病気です。ときに持続的な耳痛も伴います。疲れ、ストレス、睡眠不足、飲酒、低気圧などが誘因となります。突発性難聴よりは比較的改善しやすいですが、繰り返すことで難聴が残ってしまう方がいます。日々の有酸素運動や飲水を励行し尿を多く出すことが発症予防につながります。突発性難聴と同様の治療±利尿剤を用いたり、発症予防に漢方治療なども併用します。
内耳にはリンパ液が充填されており、外リンパ腔と内リンパ腔に分かれています。くしゃみや重い荷物を持ったりしたときにその外リンパ腔が中耳側に破裂してしまい、急に難聴とめまいを発症するものです。水の流れるような「サラサラとした」耳鳴りが特徴的です。突発性難聴に準じた治療を行いますが、しばらく安静として内耳に再度圧力をかけないようにする必要があります。高度や難治性の場合、全身麻酔下での手術で瘻孔(穴)をふさぐこともあります。
「朝礼で長い校長先生の話を聞いていたら、女の子が倒れた」というエピソードはこのめまいになります。(最近は朝礼は座って聞くようになりました)立ち上がった際などに脳に流れる血圧が低下して、ふらっとしたり目の前が暗くなるような症状がおきます。もともと高血圧を患っている方も、血管が動脈硬化で硬くなっていて血圧の調節障害が起きていますので、この病気になり易いです。足からの静脈の還流を促すために弾性ストッキングを装着したり、時間をかけて起き上がるなどの対処法となります。
バランスを担当する三半規管を含む内耳や小脳は、首の後方を上向きに走る左右2本の椎骨動脈とその先にある脳底動脈から血液の供給を受けています。この病気ではある一定の頭や首の向きでそれらの血管が圧迫されてバランス器官への血液供給が減り、ふらつきや目の前が暗くなる症状を起こします。過去の頸部の外傷やストレートネック、筋緊張性障害(肩こり)、頸椎の病気などがある場合に起こりやすいです。正確な診断には、頸部や脳のCT・MRI画像検査が必要になります。
小学生までの小児に多いですが、成人してもその傾向が残りやすい方がいます。動いているものと動いていないものを同時に感知すると起こりやすいため、バスの中で本を読んだり、車内で動画を見たり、電車で車外の近くのものを目で追う動作を繰り返すなどすると誘発されます。換気を良くして遠くを見るように心がけましょう。抗めまい薬や鎮痙薬、抗不安薬や漢方薬があります。お気軽にご相談ください。
めまいの中で脳の病気が原因の方は1%程度ですが、決して見逃してはいけません。特に延髄の病気であるWallenberg症候群や小脳梗塞は、麻痺や頭痛など典型的な脳梗塞・脳出血の他の症状が目立たず、ちょっとした四肢体幹の感覚の左右差やしびれなどが伴うだけであったりして、発症早期に気づかれにくいことがあります。診察での神経症状の確認や重心動揺検査で異常を認めた場合、すぐにご紹介して精密検査を行うことをお勧めする場合があります。
2017年に提唱された新しいめまいの疾患概念で、3か月以上続く浮遊感や不安定感が特に立っているときに出現することが反復する、またはひどいと持続するものです。発症する以前にめまいの病気や片頭痛、パニック障害や不安神経症、脳震盪や自律神経障害を患っていることが多いとされています。抗不安薬や抗めまい薬、漢方薬などで治療が可能ですが、歩行や体操のリハビリも重要となります。